趣味三昧 | 山田 和夫 |
ベランダのFRP防水工事 | ||||
ベランダの床が少し沈んできしむ音がするので、思い切って改修工事をすることにした。現状はゴムシート防水であるが、今回は、木造防水で定評のあるFRP(Fiber Reinforced Plastic:繊維強化プラスティック)防水を実施することにした。初めての体験なので、ネットで調べ、動画を何度も見てやり方を予習した。 2階のベランダは幅1メートル、長さ6メートルで立ち上がり部分を含めて面積約7平方メートルである。 1 堅固な下地作り ![]() 不具合箇所を取り除くため、まず両側の立ち上がり部分を固定する金具を外したのち、2枚のゴムマットを外し、床の合板をすべて除去した。ゴムマットは強固に接着してあったので苦労したが、再利用しないので安心して剥がすことができた。 梁の腐食部分を除去して補助材で補強し、排水をよくするため、水平だった床を1/80の角度で傾斜するよう、梁の高さを調整した。強度を確保するため、床の合板をこれまでの12ミリ厚から15ミリ厚に変えた。 写真で左側の母屋側に側溝がある。床下の梁が白くなっている部分は、傾斜をつけるため補助材を右側で1センチ高く、左端ではゼロになるようカンナをかけて調整した。 2 端末処理 ![]() 壁面を垂れた雨水が床合板の端から染み込むのを防止するため約10センチの立ち上がりを設置した。 ガラスマットは直角には曲がらないので、ローラーでFRPを塗布した際に内側に空気が残らないよう、予め三角形の面木を貼るか又はシール材を充てんしておく。 ![]() 左側の排水溝や周囲の端末処理を済ませ、合板の節穴や釘・ネジの穴をシール材で埋めて平らにし、十分に乾燥させる。 FRPがはみ出さないよう予め壁にテープを貼って養生しておく。これで下地作りが完了となる。 床を傾斜させる作業は、定規を充てながら全ての梁にカンナを掛けたので予想以上に時間を取られた。 3 FRPの塗布 ![]() 使用したFRP資材 ① ポリエステル樹脂:硬化剤を添加することで発熱して硬化する。硬化してもべとべと感が残る。 ② ウレタンシーラー:接着剤。合板などの下地にFRPを強力に接着させる。 ③ アセトン:溶解剤。ローラーや刷毛に着いた樹脂を洗浄する。 ④ トップコート:FRPの上に塗布して完全に硬化させる。表面はつるつるで着色もできる。 ⑤ 硬化剤:FRPやトップコートに混ぜることで硬化させる。気温、湿度、通気などによって添加量が異なる。 ⑥ ガラスマット:繊維を入れることでFRPの強度が飛躍的に高まる。 ![]() 硬化剤を添加したFRPは20~30分で固まるので、その間に作業できる大きさにガラスマットを切断しておく。鋏などで切ると接際部に段差ができるので、滑らかに連接するよう手でちぎる。 微細なガラスの破片が飛び散るので、必ず防塵マスク、襟巻、手袋を着用する。 ![]() FRPに硬化剤を混入して十分に撹拌する。硬化剤の量は気温、湿度、通気などによって異なるので前もって少量で試しておく。マニュアルでは0.5~5%となっているが、12月の寒い時期だったので、1~2%(FRP1.5㎏に対して朝は15g、日中は30g)を添加した。 有毒ガスが出るので、通気を良くし、防毒マスクをつける。 ![]() 予め下地の合板にウレタンシーラー塗ってFRPが接着し易くしておく。FRP、ガラスマット、FRPの順に、ガラスマットをFRPで挟むように1㎡当たり約1㎏を目安にたっぷりと塗る。適宜脱泡ローラー(金属製の専用ローラー)で中の空気を押し出しておく。立上げ部は、FRPの重さでガラスマットがずり落ちないように注意する。またガラスマットの接際部は10㎝程度重ねる。 ![]() FRPは1時間ぐらいで硬化するので、サンダーをかけてガラスマットのケバや膨れた部分を平滑に直しておく。 削りかすは掃除機をかけ、アセトンで拭いて完全に取り除く。以上で1回目のFRP塗布が完了となる。 ほぼ同じ要領で2回目のFRP塗布を行った。乾いたFRPは透明でとてもきれいに見える。 ![]() FRPは乾燥しても空気中の酸素の影響で表面にべた付きが残るので、完全に硬化させるためトップコートを塗る。 トップコートは染料を入れることで彩色できる。乾燥した表面は滑りやすいので、写真ではわかりにくいが転倒防止のため骨粉を入れて表面をザラザラにしてある。 作業期間は、不具合箇所の除去と下地作りで3週間、FRPの塗布は2日間であった。 費用は、下地作りに2万円、FRP材料費に3万円の合計5万円であった。 4 感想 リフォーム業者に問い合わせたらベランダの耐用年数は15年が限度だそうで、築23年の我が家では当然全面付け替えになる。足場を組むなどかなり大きな工事になり、費用もかかるので、DIYで改修することにした。新設と異なり改修は現在の不具合部分を除いた上で、更に新しいものを作り上げるので新設の2倍も3倍も手間がかかる。しかも既存の設備の隙間を縫っての作業だから面倒だ。しかし自由の身、時間はたっぷりある。 私にとっては新たな趣味を発見したことになりとても楽しかった。今回体験したのはFRPでも「防水」という分野で、このほかに「成形」もある。簡単に言えば「防水」は接着剤で樹脂被膜を貼りつけることに対して、「成形」は剥離剤を塗った型に樹脂をぬり重ねて作品を作ることである。生活雑貨や模型などを作ることができ、こちらも面白そうだ。 |