42期 徒然草 今久保 宏大
日本を今一度せんたく

 高知を出てから半世紀を過ぎた。学生の頃は、学校の休みの度に帰省していた。
 岡山県の宇野港から宇高連絡船に乗るとどこからともなく、何となくアクセントの異なる懐かしい言葉が聞こえてくる。
 「帰ってきたなー」と実感する瞬間である。

町田橋

 あれから半世紀、卒寿を迎えた母のため、年3回帰るようになってまもなく20年になる。
 飛行機、列車、高速バスと手段は、いろいろだが、高知に着くまであの安堵感はない。 



 今年も、5月の連休を利用し、帰省した。 


 取っている高知新聞を見ていると「土佐人の知らない土佐弁講座」の見出しで全面記事があり、思わず目が追った。

 副題は、「日本を今一度せんたく=洗濯?or修繕?」。
 坂本龍馬が姉・乙女に宛てた手紙の一節である。
 “せんたく”に修繕の意味が? 龍馬はどちらの意味で使ったのか?

 高知出身と言いながらも、初耳であった。狭い郷里のことも知らないことが多い。
 また、新聞には土佐弁の絶滅危惧種と新種を紹介していた。
 新種の多くは、若者のはやり言葉などに土佐弁の語尾を加えた言葉が多い。 

 「ボッチバー」ぼっちり(ちょうど良い)に、その程度の意味を持つ、“ばー”を加え、「これ、あんたにボッチバーやか」となる。
 土佐弁にも時代の流れを感じる。 

 ちょっと興味が出て、早速本屋で地元発行の「簡易土佐弁辞典」(著者:一の瀬愚)を購入。
 土佐弁は、地形からも想像できるように、四国でも高知のみで、あと3県は同じ方言に分類されるらしい。
 更に高知の中でも、西の方(足摺岬の付近)は、区画される。
 イントネーションは、東が大阪、西は東京。理由は不明。

 また、古くは「遠狭」と呼ばれ、遠流の地でもあった。
 戦乱に敗れた実力者も多く、平安時代の言葉が多く残っている。
 
   あかい
(明るい)、おどろく(目を覚ます)など。


 土佐弁は他県の人には、喧嘩をしているように映るらしいが、飾り気がなく、敬語の少ない身内の言葉である。

 郷愁を覚えるのも当たり前かも。