42期 徒然草 小柳 毫向
「武士の娘」を読んで
             
 先日杉本鉞子さんが書かれた「武士の娘」なる本に出会った。

 あまり期待していたわけではなかったが、読んでみるとなかなかどうして久しぶりにいい本に巡り合ったという満足感に満たされた。

 著者は明治6年に長岡藩の家老の娘として生まれた、今で云うところのお嬢様である。
 しかし今時のお嬢様と違うのは、小さいころから厳しい教育と躾を受けており、女として必要な料理、裁縫、お茶、お花のほか6歳から四書五経の素読をやらされている。
 勿論親の強制である。

 文章は語り口調で書かれており実に上品で読むほどに心が洗われる。

 著者は結婚のためアメリカに渡り、夫との間に二女をもうけるも夫が急逝したため一旦は帰国するが、日本の生活習慣に馴染めない娘のため再び渡米し異国の地で女手一つで子供を育てる逞しさも持っている。
 天晴れな女性と言わざるを得ない。

 幼児期に厳しい躾を受けた子供と自由気儘に育った子供では成長して差ができるのは当然のこと、統計では日本の人口は2,050年に約9,500万人まで減少すると予測されている。
 急速に少子化が進む状況では少数にして精鋭なることが求められるが、残念ながら我が国はその逆に進みつつある。
 幼児期の教育の在り方を真剣に問うべき時代であるかも知れない。

 なお本著はアメリカで発行されてベストセラーになり翻訳されて日本でも発売された、あの新渡戸稲造氏の「武士道」と同じ道を辿った本でもある。

 「武士道」と併せ読めば日本民族の素晴らしさ、日本民族精神の崇高が理解できる。

 一読をお勧めしたい。
                                                  
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