42期 徒然草
読書のすすめ(17)  小栁 毫向

 一か月程かけて、以前読んだ麻生幾の本を読み直してみた。

 「宣戦布告」(上下巻講談社)、 「ZERO」(全3巻)、 「エスピオナージ」(上下巻)、 「ケースオフィサー」(上下巻)、 「外事警察」(2巻)、 「瀕死のライオン」(上下巻) 以上幻冬舎文庫。

 「宣戦布告」は原発を狙って11名の北朝鮮の特殊部隊の隊員が福井に潜入する。
 これへの対応のためまず警察が出動するが犠牲者を出してあえなく退陣、あとは自衛隊が対応する以外にないが、これも治安出動いわゆる警察官職務執行法の権限しか与えられず相当の犠牲者を出す。このような事態における政府、各官庁等のゴタゴタ、我が国の危機管理の弱点を余すことなく描いている。


 以前、航空幕僚長を経験した同期生に質問をしたことがある。

 「領空侵犯に対しスクランブルをかけ、警告にも関わらず領空に入ってきた場合どう対応するのか」
 「警告を続ける以外何もできない」
 「では侵犯機が東京の上空で爆弾を落とした、この場合はどうする」
 「攻撃することはできる、しかし東京上空で撃墜した場合2次災害が心配になり、攻撃を躊躇うかも知れない」これが実態だ。

 先の国会で安全保障法案が成立した、結構なことだが我が国有事の際自衛隊法の下部政令が未整備なため自衛隊は何もできない、このあたりを国民に理解してもらう必要がある。

 麻生幾はこのことに警鐘を鳴らしている。

 「ZERO」は公安警察の中でも存在がベールに包まれた組織。

 「エスピオナージ」は諜報戦争のこと。

 「ケースオフィサー」は適正勢力の中に味方を育て上げる公安。

 「外事警察」を含め以上は公安物である。


 「瀕死のライオン」は自衛隊の中でベールに包まれている特殊作戦軍が活躍する。
 空挺団長をしたことがある後輩に「特殊作戦軍とはどんな部隊だ」と聞いたことがある。
 笑って口を濁したが、一つだけ教えてくれた。「自分の右肩上部に的を置いて200メートルの距離から射撃をさせたことがある、見事に的に命中させた」



 我々の知らないところで厳しい訓練に励んでいる隊員に思いを致すことも必要ですね。

 麻生幾は公安や自衛隊、内閣情報調査室等と相当なコネクションを持っている、そうでなければここまでリアルな小説は書けないであろう。


 とにかく面白いです、興味のある方は取りあえず「宣戦布告」を読まれ、満足されたら他も読まれてはと思います。