42期 徒然草
読書のすすめ(18) 小 栁 毫 向

 今回は、古代史に係る品を紹介します。

 高山貴久子著「姫神の来歴」(新潮文庫490円)

 彼女は、絵本や詩集を出したことはあるが、古代史については全くの素人である。

 ある時見た夢がきっかけで古代史に関心を持ち、以来10年の歳月をかけて、さまざまな文献を読みまた主として高千穂、出雲、紀伊の吉野に所在する多くの神社を訪れ、祭られている祭神や神社に伝わる古文書、いわれを克明に調べて書かれた本である。
 彼女は二人の姫神を軸に古代史に秘められた謎を解き明かす。

 一人は櫛名田姫。
 櫛名田姫は大国主命の妻であり、素盞鳴大神に出雲の国譲りをした後、素盞鳴大神の妻となった姫神である。

 もう一人は丹生都姫。
 この姫神は吉野の多くの神社の祭神で、古事記や日本書紀では天照大御神の妹神として紹介されている。

 この二人の姫神を通じ、古事記や日本書紀に書かれている物語の真実に迫り、また中国や新羅の古文献に書かれているが、記紀には一切書かれていない卑弥呼とは誰なのか、あるいは初代神武天皇とは一体誰なのかを大胆に推理する。
 これまで、高千穂、出雲、天皇等個々に関する文献は多々あるが、この本はそれらを抱合した、いわば古代史に係るスケールの大きな推理小説といってもいいかもしれません。

 しかし説得力はあります。是非一読ください。

 なお高山女史はこの本を書かれた後急逝された。おしい人でした。