42期 徒然草
読書のすすめ(2) 小栁 毫向

 高田郁(たかだ かおる)さんを紹介しましょう。

 高田さんは「自分の書いた小説を読んだ方が少しでも幸せな気持ちになっていただいたら」という心で本を書いているそうです。それだけに読んだ後心が温まります。

 「銀二貫」(幻冬舎出版)これは大阪の商人を主人公にしているだけあって、大阪の本屋大賞になった本です。書店の書評に曰く「この小説は大阪人の誇りです」「ええ話です。ほんまにたまらなくええ話なんです」大阪の人間はケチと言われますが、無駄な金はビタ一文出しませんが、これはと思うときはドーンと金を出す、そういう気質を持っています。
 昭和38年にいわゆる38豪雪があり自衛隊が災害派遣をやりました。昭和38年は60年安保の直後であり世の中あげて自衛隊反対の風潮の中で黙々と働く自衛官を見て、大阪の財界の雄であった松下幸之助氏は「こらァ~自衛隊さんが気の毒や」と思い大阪の財界に声をかけ5,000万の金を集め自衛隊に持って行きました。38年は我々が防大に入った年、当時の学生手当3,000円を少し超える程度だったと記憶していますが、現在は10万を超える手当が支給されていますから約30倍、今の金にすると約15億です。しかし自衛隊は金を受け取ることができないため、それでは協力会組織を造って自衛隊を支援しよう、として造られたのが大阪防衛協会であり初代会長に松下氏が就任されました。(この話はご参考までに)そういう大阪商人の心意気を書いた本です。

 次は「みおつくし料理帖シリーズ」(角川書店出版)これまで9冊刊行されています。タイトルは八朔の雪、花散らしの雨、思い雲、小夜しぐれ、心星ひとつ、夏天の虹、残月、美雪晴れ、どうですか粋な味のあるタイトルでしょう。ストーリーも面白いですがあえて触れません。小説の中にさまざまな料理が出てきますが、これらの料理は作者自身が試行錯誤の上創作したこれはという一品を取り上げており、巻末にはレシピも紹介されています料理に関心のある方はご一読を。
 9巻目の「美雪晴れ」は2月18日に発刊され小生その日に新宿の紀伊国屋で買いました。紀伊国屋では最近の売れ筋ベストテンを紹介していますが「美雪晴れ」は発刊した日にベストワンに輝いていました。尚次の10巻目が「天の梯」のタイトルで完結となり今年8月に発刊されるそうです。

 年を取ると涙もろくなると言われますが、最近の世情腹の立つことが多く涙を流すようなことに出会うことも少なくなりましたが、この2つの作品結構泣けます。