42期 徒然草
 読書のすすめ(20) 小 栁 毫 向

 今、大物に挑戦中です。船戸与一の「満州国演義」(新潮文庫)

 文庫化された本を読んでいますが、9巻のうちこれまで6巻まで発刊され、残り3巻は6月から8月にかけて発刊される予定です。
     

 本来ならば全部を読み終わってから推薦すべきですが、ある読書好きの先輩にこの本を紹介したところ、今までお前が薦めた本の中で最も優れた本だ、との評価を戴きましたのでまず間違いないでしょう。


 歴史の語り部として敷島太郎、次郎、三郎、四郎の四兄弟を当て、満州国成立からその終焉までを描いている。太郎は当初奉天領事館の書記官後に満州国の外交を担当、次郎は満州馬賊、三郎は憲兵隊将校、四郎はどちらかといえばノンポリ、後に満州の特務機関の手先として働かされる。

 この4名は作者が仕立て上げたものだが、描かれる出来事はすべて史実に基ずくものであり、登場する人物は実在した人物である。したがってこの本はドキュメンタリー小説といっていいだろう。
 また単に満州国のみならず、日本の社会情勢、政治情勢、軍事情勢、満州事変に始まる日中間の戦争の実態、さらにヨーロッパ、アメリカ等の国際情勢をも描いているので昭和初期の歴史がほぼ理解できる。近現代史は我が国歴史教育の盲点であり弱点でもあるが、この本で十分認識できます。

                        
 司馬遼太郎が「坂の上の雲」で明治という時代と日露戦争を描きましたが、「満州国演義」はそれに匹敵する本と言っていいでしょう。是非挑戦してみてください。