42期 徒然草
読書のすすめ(21)  小栁 毫向


 久しぶりに投稿します、いろいろ本を読んでいますが、皆さんに紹介するような本にはなかなか出会いません。
 これは、という本にようやく出会いました。


 磯田道史の「無私の日本人」(文春文庫)


 この本では江戸期に生きた3人を取り上げています。


 穀田屋十三郎、中根東里、大田垣蓮月。


 穀田屋十三郎は仙台藩の吉岡宿の商人、吉岡宿は年々廃れていき、このままでは廃村になることを憂い、9人の同士を得て1,000両の金を工面、これを仙台藩に貸付毎年100両の利息を得て村人に配り吉岡宿を救った。
 話は単純であるが、1,000両という金は破産、一家離散、身売りまでも覚悟しなければ出来ない金。しかも本人だけでなく親、兄弟,妻、子供までこれを了としたすざましいまでの覚悟には涙せざるを得ない。
 この項は、映画「殿、利息でござる!」になり、今週末5月14日に公開になります。
 (参考までにフィギュアスケートの羽生結弦さんが、“殿様”の伊達重村役で映画初出演)


 中根東里は儒者、しかもこれほど孤高にして高潔な儒者はいない。
 荻生徂徠は歴史に名を残すが、この本では俗物扱いである。中根の生きざまを見ればこれも納得し得る。

 大田垣蓮月は藤堂家の高官が京都の芸妓に産ませた女性。生まれてすぐに他家に養女に出される。絶世の美女故のさまざまな辛酸を経て出家し蓮月と名乗る。
 この女性の生き方もすざましい、女性ながら天晴れと言わざるを得ない。
 晩年戊辰戦争が起こり、多くの人が死にゆくさまを憂い西郷隆盛に
   「あだ味方 勝つも負くるも 哀れなり 同じ御国の 人と思へば」
 という歌を送った。これが後の江戸城無血開城にも影響を与えたと言われる。


 久しぶりに魂が洗われました。時に魂の洗濯も必要ですね。

 この本は若い世代の人にも読んでもらいたいですね。

 私は子供に恵まれませんでしたが、子供さんがいる人は薦めていただけたらと思います。