42期 徒然草
読書のすすめ(7) 小 栁 毫 向

 今回は山岳小説を紹介します。

 まずは沢木耕太郎の「凍」(新潮文庫)
 沢木はルポライターでありさまざまな人を取材しそれを小説化する、いわゆるノンフィクション作家である。

 夫婦揃って世界有数の登山家である山野井泰史・妙子を取材して書きあげたのが「凍」である。8,000メートル級の山に登るには大量の人員・物資により逐次にキャンプを設営しながら登る方法と少人数又は単独で短期間で登る(アルパイン・スタイル)方法があるが山野井夫婦は後者である。
 夫婦が目指したのはエベレストの一山ギャチュンカン、この山は8,000メートルにわずかに48メートル足りないがほぼ崖の山。この山に無酸素で挑んだ。
 崖であるがゆえにテントを張ることはできずロープで体を固定し零下40度を超え強風にさらされながら仮眠をとるという状況での登山であった。
 無酸素では5日が限度と言われ、それを過ぎるとさまざまな症状が出る。
 山野井も途中で目がほとんど見えなくなり手・足共に凍傷しかも下山 途中雪崩に直撃される極限の状況下7日目に死の一歩というより半歩手前で下山した。

 これはなかなか凄い小説です。


 次に笹本稜平の「春を背負って」「還るべき場所」(文春文庫)

 前者は奥秩父を舞台とした小説で今映画も上映されている。
 後者は世界第2峰K2を舞台に描いた小説。

 いずれもフィクションの世界だがよくできている面白い小説である。