42期 徒然草 田中 征之
イギリス旅行の思い出(その2)
    
 イギリス旅行2日目
 6時のモーニングコールの音で目を覚ましました。
 2人部屋に一人(料金2倍)なので、大きなベッド2つと立派な机、応接セットと多分一生こんな大きな部屋には住めないだろうと思いました。

 空腹のため、6時半の朝食開始を待ちかねて早めに行くと、既にツアーに参加してる親子が来ていました。この親子は次のホテルでも一番に来ていたので 「早いですね」と声をかけると母親は「この子はお腹がすいた、早く行こうと騒ぐんです」と笑いながら言いました。 この女の子は小学校3年生で、ともかく元気で行く先々で走り回っているので、女性グループの「アイドル」的存在でした。
 学校の方はどうしたのかなとちらっと思いましたが、後で聞いた話ではツアーに申し込んだ時は夫婦で来る予定が旦那が急に仕事で来れなくなったそうで、それを聞きつけた娘が「私が行く」と言って聞かないので仕方なく連れてきたとの事でした。
 多分、病気か何かの理由をつけて学校を休ませたのでしょう。
 この子は帰国後、一時元気が無かったそうで、楽しかった思い出を友達にも話せずストレスが溜まった様です。

 ホテルの朝食はパンとハムエッグ、サラダが中心で、菓子パンが種類の多い事と焼きたてで美味しかった事と机にトースターが5台も置いてあり、イギリス人はトーストが好きという事が分かりました。

 8時に荷物を集合持って集合し、専用バスで次の目的地の保養地トーキーへ途中、アガサクリスチーTVドラマのロケ地となつたネザーワロップ村とイギリスで最も古いセントアンドリュース教会を見学しました。この教会に歩いて行く途中、きのこを思わせるかやぶき屋根の小さな家が点在し、まるで絵本の世界に入ったような感じがしました。観光地になっていますが、実際に人が住んでいると聞いて驚きでした。多分100年以上代々住み着いている感じでした。
                  日本にもかっては田舎の農家はかやぶき屋根だったのが今は殆ど見られなくなっています。欧州は古い町並みを伝統的に大事にしていて、イギリスでは、窓枠一つ変えるのも市或いは町の許可が必要と言われています。
 
 実際、ロンドンでも、その周辺でも、郊外(田舎は勿論)でも、新しく建設している現場は目にしませんでした。恐らくロンドンオリンピックでも必要最小限に止め、終わったら原形に復す所もあるのでは無いかと思います。
 この古き時代の町並み・建築物を大事にする情熱は、ドイツ・ドレスデンが大空襲を受けて殆ど瓦礫の町になったのに今は破壊前と殆ど変わらない町並みになっていることでも分かります。                  
 イギリス人の郷愁の詰まっているネザーワロップ村を見て、いよいよお楽しみの昼食タイム。街道に面した比較的大きなパブがレストランを兼ねていて、ツアー全員(40人弱)が分散してテーブルを囲み食事となりました。
 女性陣の中には出てくる料理を写真に撮っている人もいて、成る程、後でどんな料理だったか思い出したり、説明したりするには良い方法だと思いました。
 さて、いよいよメインディシュ、何が出てくるかと思ったら、ステーキではなくて、豚肉(大きさはステーキ)の茹でたもの、流石にソースをかけても美味しいとは言えません。矢張り肉は焼いた方が美味しい、イギリスの料理はまずいと言われますが、何となく納得、でも散々歩いので完食でした。


 食事の後、パブのカウンターでビールを注文して、漸く昨晩飲めなかったギネスの黒ビールにありつきました。外国は日本のように冷やして飲む事はあまりなく殆ど常温、それでも乾いた喉には限りなく美味でした。
 次はいよいよアガサ・クリスチーの生誕の地「トーキー」へ、約3時間のバス移動、車窓から見える風景は限りなく続く緑の牧草地帯で所々にのんびり草をはむ羊を見かけました。イギリスも人口よりも羊の方が多いと思われる程牧畜が盛んで、それは毛を取るよりも子羊をラム肉として食するのが目的と聞いて
 あの子羊たちもいずれ・・と妙な感傷を覚えました。
 よく見ると点々と小さなバンガローのようなものがあり、人が入るには少々小さすぎるので、何だろうとガイドの小山女史に尋ねると「あれは羊夫婦の家ですよ」と答えが返ってきました。流石、個人主義の国、羊たちまで配慮されているわけです。

 余談ですがイギリスは世界一?個人主義の徹底した国で、子供も成人すると親とは一緒に住まない様で、親の家を訪ねても戸口で要件を済ませ、中には入らないそうです。これは余り見習いたく無いですね。
 最も日本の親の過保護は少々行き過ぎで、何時までも親に世話をかける等、どっちもどっちかも知れません。
 イギリス人は子供の頃から独立心を養われ、若くして親元を離れてからは親の生活に干渉せず(言わば他人となる)、シティで一生懸命働き、金を貯めて、壮年でネザーワロップ村のような美しい田舎に土地を買って、余生を過ごすのが夢だそうです。

 途中、小さな山らしきものと森も見かけましたが、所々うねりの様な起伏はあるものの、殆ど平地で、国土は日本の7割程ですが、日本は7割が山地なのでイギリスは広いと言うのが実感でした。

 パブで飲んだ黒ビールとバスの心地よい振動で何時しかまどろみ、目が覚めると丘の上に美しいトーキーの町並みが見えてきました。