42期 徒然草 田中 征之
イギリス旅行3日目:ダートムーアへ

 9時に出発し、バスはトーキーの市街を通ってセントメアリー教会へ。坂道を登ってたどり着いた教会は内部の祭壇も立派で、ここでアガサが子供の頃から礼拝に通った話などを生前を知る人から話がありました。前の教会もそうでしたが、この教会も見事なステンドグラスがあって、目を奪われました。
 


矢張りキリスト教を信仰する人たちは教会が生活の中心にあるのだなと思いました。



 貸し切りバスは一旦、トーキーを離れ、次の目的地のダートムーアへ

 ここでイギリスの天候ですが、、一日で3回変わると言われています。
 この日もホテルを出発したときは晴れ、途中昼食の頃は曇り、その後は雨、又止んだのでホッとしたら、何と最後に行ったハウンド・ドアの岩山ではヒョウが降ってくるなど、そのめまぐるしい変化には戸惑いを覚えます。

 バスはいよいよシャーロックホームズの「バスカビル家の犬」に登場するダートムーアへ。
 この「バスカビル家の犬」はコナンドイルの傑作の一つでこの地方に伝わる巨大な犬の伝説があり、これを利用した領主の血筋を引く男が新しい領主を実際に彼が沼地に隠して飼っている巨大な犬を使って襲わせ、殺そうとするのを、ホームズと友人のワトソン博士が防ぐという話ですが、この土地の特異な地形を題材に上手く取り込んでいます。
 地形的には大きなうねりのような起伏があり、かなり急な上り下りでバスもきつそうでした。馬でこの坂道を駆け上がろうとしたら、余りのきつさに馬が死んだと言われる程です。(馬は人間と違って手を抜かず最後まで走るので)又、平地でも道を外れると沼地があり、そこにはまると底なし沼なので生きて出ることが出来ないそうです。
 それ以外に岩山が点々とありその辺りは岩がごろごろする荒れ地になっています。この変化に富んだ地形はとても魅力的で、私もこのツアーで回った所で一番印象深い所でした。
 この沼地の近くには脱走できないので有名な刑務所があり、その理由は夜、脱出しても、この底なし沼があるので、明るくなるまで動けず、直ぐ見つかってしまうからだそうです。ここにも寄って土産物を買ったりしました。

 次に寄ったうねりの底にあるウイティコム村の散策では休憩した公園で乗馬で来た親子に出会いました。坂は馬にとってはきついでしょうが、この素晴らしい地形を乗馬で楽しむと言うのは流石、イギリスだと思いました。
 この土地はイギリスの人も好きな様で、休日にはハイキングを楽しむ人が多い様です。但し、小道から外れて沼地に入り込むと危険なので、確かそのような表示が有ったように思います。(沼地 危険!)

 ハウンド・ドアの岩山は最も魅力的な所の一つで、30mほどの丘の上に巨大な岩山があり、息をぜいぜい言わせながら丘を登ると周囲が一望に見渡せ裏側は岩がごろごろする荒れ地で小説「嵐が丘」に出てくる荒れ野もさもあらんというなななかの光景でした。
 この巨大な岩山に取り付いて少し登ろうとした途端、一変にわかにかき曇ったと思ったら、何とヒョウがばらばらと降って来ました。これはたまらんとあわてて下山し、バスの中に逃げ込みましたがこれもイギリス、気象の変化を実感として味わいました。
 それにしても岩山の丘の上から見た空の雲の流れ、そらの色の変化は正にターナーの絵の世界でした。


 余談ですが、ターナーは英国(世界的にも)で最も有名な画家で、多くの自然風景画を残しています。(後半は歴史画家としても有名な故事や戦闘場面を描いています)このターナーは自然の変化に魅せられ、少年の頃から空の雲の流れ、そらの色の変化を毎日スケッチしたと言われています。私は絵心も自分で描くことも全く有りませんがターナーの絵には何故か心惹かれます。

 バスは5時過ぎにグランドホテルに着き、添乗員が希望者を別な店に案内するというので又、昨日のメンバーに会えると期待したのですが、何と言うこと、集合時間を間違えたらしくロビーに下りていくと既に誰もいなく、出発した後でした。
 もう一人取り残された女性がいて、結局歩いてスーパーに夕食を買い出しに行くことに。何とかスーパーで昨日と同じ夕食を買い、トーキーの町を歩いていると喫茶店らしき店があり、せっかくここまで来たのだからと言うことで店に入り、コーヒーとピザを注文して1時間程歓談、そろそろ帰ろうと外を見ると、何と昨日、駐車場からパビリオンに移動したときに我々一行をじろじろ見ていた若者が二人、窓から店内を見ていました。この二人、どうも挙動不審でシンナーか何かをすってラリッているように思えました。今出るのはまずいしばらく様子を見る事にしました。
 しばらくして姿が見えなくなったので、勘定を払って外に出て帰り道を急ぎましたが、なんと三叉路付近に彼らがたむろしていました。 このまま行くと彼らの前を通ることになり、悪さをするとも思えませんでしたが、腕力に自信のない自分としては女性連れでもあり、ここは回り道をして彼らに姿を見られぬようにするのが得策と思いました。
 パビリオンの裏手から海岸道に通じる小道を抜けようとしたのですがこの道は細い道で片側は建物の塀、反対側は海と言うことで最も悪い道を選んでしまいました。これはまずかったなと思った時に暗闇の向こうから二人の人影が・・
 これは最悪、自分1人なら得意の足で元の方向に走ることも出来ますが女性を連れてでは追いつかれてしまう、このまま進むしかないと覚悟を決めて片側に寄って待った所、やってきたのは若いアベックでホッと方の力が抜けました。
 その後は何事も起こらず、海岸道の夜道を無事にグランドホテルに帰りましたが冷や汗ものの道行きとなつてしまいました。

 ともかく、何事もなくホテルに戻れたのはラッキーで、些細なことでも予想しない展開になって事件に巻き込まれることは海外旅行ではよくある事でどう対処するか、予め外出する前によく知っている人に治安情報等を聞き心づもりをしておく必要有りと思いました。
 この場合は、タクシー利用が最善だったと思います。ホテルまで夜道を歩いて帰る危険度と3ポンド(600円)払うのと判断できなかったのは情けない限りです。
 ここで海外でのタクシー利用が安全かということですが、イギリスの場合は最も先進国で、まず安全と言えます。乗合馬車の時代を引き継いで例の黒塗り箱型の車が今も使われていて、中の座り方も馬車と同じ(2~3人座れる座席が相対している)、料金の払い方も一旦車外に出て、運転手にドアの窓越しに払うやり方です。これならば日本のようにタクシー強盗も出来ないでしょう(中は仕切り)し、紳士の国なので、乗り逃げもないと思われます。
 しかし、開発途上国はどうでしょうか
 はっきり言って、日本と同じ様に思うと危険です。特に白タクは乗ってから法外な値段を吹っかけられます。またメーターのないタクシーも数倍の料金を平気で言ってきます。大体、ホテルに来ているタクシー及び流しでもこの会社はOKと言われているものは大丈夫と思われます。
 インドネシアでは現地駐在の日本人が夜間、怪しげな?タクシーに乗ったら裏通りに連れて行かれ、タクシーの運ちゃんが姿を消し、代わりに屈強な男とたちが乗り込んできて金品を奪われたという話を聞きました。
 数年前の話で、現在は希にしかないと思いますが、油断は禁物、タクシー利用一つでも、ホテル(案内)に聞くとか、現地の知人に聞くとか、事前の知識が必要です。
 白タクは中国で、タクシーで数倍の料金を請求されたのはインドネシア、ベトナムで実際に経験した話です。

 話はそれましたが、トーキー2日目も終わり、明日は再びロンドンに帰りこのツアーのハイライトのシャーロックホームズ博物館の見学、午後からTVドラマ「名探偵エルキュール・ポアロ 」のポアロ役を演じたディビットスーシエさんとのお茶会ということで期待を胸に眠りにつきました。