42期 徒然草 田中 征之
ラマダン

 皆さんは「ラマダン」という言葉をご存知でしょう。

 インターネットで見てみましたら、この月の日の出~日没までの間、イスラム教徒の義務として「断食して飲食を断つ」事と有りました。
 イスラム教徒はこの間、瞑想と沈思黙考をして、慈善活動や寄付を行います。このラマダンの時期は「月観測委員会」が三日月が現れたのを確認してから始まり、同じような三日月が確認された頃に終わるそうです。

 この間、約1ヶ月、食べることの欲望をひたすら我慢するわけです。

 この間終わったロンドンオリンピックではちょっとした波紋が広がりました。
 それは今回のラマダンの時期が7月20日~8月18日までで、モロにオリンピック期間と重なってしまったことです。

 イスラム圏の選手達はどうしたのでしょう。やはり戒律を守って日の出~日没までの間は食べ物は勿論、水も口にしなかったと思われます。特に水分補給を必要とするサッカーなどは影響があったと思われます。
 この間の日本の戦績は日本―モロッコ 1-0 日本―エジプト 3-0 でいずれも後半(エジプト戦も2点)あげたものでラマダンの影響はあったのではないかと思われます。

 私が黒柳君と行ったインドネシアは、丁度このラマダンの時期に当たり、一般庶民がこの時期、如何に暮らしているかを見聞きできる貴重な体験をしました。

 インドネシアは世界最大のイスラム国家で人口の90%はイスラム教徒です。
 然しながら中東のイスラム国家に比べて戒律は緩く、我々日本人にとってもビール等のアルコールも黙認されていて快適な国です。(勿論イスラム教の人は不可)

 ホテルで朝の3時頃、突然唸るような声に起こされました。これはスピーカーから大音響で流されるコーランで、しばらくすると窓から見える市場が早朝にもかかわらず活気づいていました。
 夕方も日没前に同様に人が出ていました。

 これはラマダンが日出~日没までの間、飲食をして飲食を断つということですから、日の出前に食料を買い、十分(1日分)食べる、日没前に買い物をして日没後、すぐ食べるという戒律に許される生活の知恵といったものでしょうか。
 お世話になった東急不動産の社長の小林さんの話では、ラマダンの期間、午後になると社員(インドネシアの人)が不機嫌になると言っていました。
 早朝に食いだめしても、やはり午後にはお腹がすく、人間、腹が減れば自然と不機嫌になります。

 我々がデパートの地下食堂で昼食をとっていると入口付近を通る人がちらっとこちらを見ますが、それは食べられることの羨望の眼差しに見えました。
 デパートの若い女性の売り子さんが、日没になったことを知ると柱の影に隠れて持参した食べ物をまさにむしゃむしゃとほうばっていました。

 ラマダンが終わると盛大にパーティをするそうですが、自由に食べられる喜びと戒律を守り、欲望を抑え、耐えた清々しさがあるのかと思いました。