42期 徒然草
月下美人 田中 征之
 
 「ひっそりと夜に花咲く純白の花 たれを待つのか月下美人」
 

 今年も月下美人が律儀に花をつけてくれた。

 しかも一つの株から3度もそれも3度目はなんと同時に4つのつぼみが膨らんで花を咲かせた。

 竹は枯れる前に見事に花を咲かせるという。
 まさかそんなことはあるまいが、今までにないことだった。


 年に1回花を咲かせてくれれば御の字、つぼみが期待を持たせながら咲く前に枯れることもあるし、何年も咲かないこともある。
 

 きっと冬の寒い時は狭い我が家で一番日当たりの良い窓側に置く程大事にしたし、春が来て外に出した時には日の当たる特等席に鉢を置いて肥料と水を与えた恩義に感じたに違いない。


 月下美人はその名は如何にもロマンチック、月の夜に咲くわけでもないが、そうした方が良いと思った人がつけたのかもしれない。


 事実、咲くのはだいたい夜の10時頃から深夜の2時頃まで、暗闇に鮮やかな純白の大輪の花を咲かす。
 それも僅か2時間ほどで花を閉じる。
 
 ややグロテスクなつぼみが大きく膨らみ、今晩こそはと期待を持たせるがなかなか咲かない。

 諦めて眠ると夜中に咲いて朝起きた時にはしぼんでいるという、なかなか咲くところが見られないし、純白の大輪の美しさと花の命の儚さが愛される由縁かも知れない。


 サボテン科の植物だが意外と寒さに強い。霜やゆきで葉がしもやけにならなければ戸外でも軒下で大丈夫、夏の暑さも時々水をやれば元気に育つ。
 だいたい6月ごろから9月頃まで花を咲かす。


 始めは葉の先に粟粒のような花芽が出て1ケ月位でグングン大きくなり鎌首をもたげた様な独特の大きなつぼみとなる。
 サボテン科だけあって生命力は強く、葉を切って鉢の土に差て水を与えるだけで根ずく。


  私も余分な葉を差して7鉢根ずかせ、高校の催しの時に園芸部の一角に置かして貰ったら全部持っていってくれた。

 それぞれの嫁入り先できっと美しい花を咲かせてくれるだろう。そんなことを思いながら次の鉢の成長を楽しみにしている。

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