42期 徒然草 谷口 日出男

51度6分だって

 珍しく7時前に妻が起きていた。布団の上でスマホに見入っている。

"おはよう!今日はえらく早起きだね?"と声を掛けると浮かぬ顔で"淳子が熱を出して..."と云う。着信音でメールが来ているのがわかり、淳の状況を把握。二回目のワクチン接種でゆうべ遅くから発熱、
 今朝がたにはなんと51度6分だって、
 
 "エッ!ほんと?なんでそんな高い体温が、体温計の見間違いじゃないの?"と妻に言う。妻もそんな高温は?と思い、確認したところ体温計の写真が送ってきてるので間違いないわと言う。そんな高温じゃ命が危ないんじゃないかと一瞬思うも本人は関節の節々に痛みがあるも意識はしっかりしてるとか...
 まぁこうして自分でメールを打てるくらいなら意識の方は大丈夫みたいだ。それにしても51.6℃とは? ちょっと考えられんなぁ、そんな高温ってホントあるんだろうか...
 二人起きても何も手がつかず。"状況聞いてみたら"と言うと"いま休んでるわ、向こうからかかってくるまで待つわ、それに毅君がいるんで大丈夫よ"と言う。それにしてもこの51.6℃どう解釈すればいいんだろうか?人間そんな高温に耐えれるんだろうか、彼女の頭毀れないんだろうかとあれこれ思いめぐらすも凡愚の思いの枠を出ない。妻のいつもの朝のご先祖様へのお茶出しとお祈りは、今日は殊の外長い。めったに拝んだこともない俺も手を合わせて淳の無事を祈る。

 家でじっとしても何も変わるわけでもないんで?いつものように今日もテニス。負け試合多くて「負けて口惜しい花いっかんめ(一貫匁)」と口惜しさも積もり積もったか...その間、俺のガラケーを見るも妻からは何のメールもはいってなかった。言うまいかと迷ったがテニス仲間に今朝の件を話す。即座に"そんな高温、有り得んな!そんなんじゃ死んでしまうよ!第一、体温計ってそんな温度まで測れるの?谷口っさん、そりゃー体温計の見間違いだよ!"の即答なり。そうだよなぁ俺もそう思うよ、しかし俺は見てないが本人からはそうだと写真付きのメールが来てるし.

 いつもより早めに切り上げ帰宅。妻から開口一番"熱は大分下がったみたい、いまは38℃ぐらいとか、毅君が色々と面倒を見てくれてるみたい、良かったわ"の報告あり。良かった、良かった、下手したら午後の飛行機便でも取らなきゃと帰りの道すがらあれこれ思ったりもした。 
        
              

きのう、休みを取って二人で集団接種に行ったとかで接種会場の都庁前でのスナップ写真が送られてきてた。妻のスマホでのラインを見せて貰う。息子から"そんな風貌で良く受付して貰えたなぁ""わたし美しいから大丈夫よ""よく言うよな!"と兄妹間の楽しいメールのやり取りを見せて貰った。ガラケーにはないスタンプって言う奴も当意即妙で可愛らしく面白い。そして、なぜだか接種後、普通は15分待機なのに本人だけは30分待機だったそうだ。なぜかは聞かなかった。若い頃「気胸」で一週間ほど入院したことがあったなぁ、そのせいかなぁ...

 一回目に引き続き二回目も順調に終わるかと思ったその夜に発熱したのだ。
接客業としての仕事柄、一日も早いワクチン接種を願っていたがやっと申し込みが受け付られたがこんな試練が待ち受けていたとは...  家族10人、二親(ふたおや)は高齢につき?何ら副反応の症状なし。長男は38℃半ばの高熱、その家族なんもなし。次女家族も少し発熱するも特になし、一緒に受けた夫の毅君も腕が少し腫れたほかは発熱等の症状なしの所に、最後になって彼女だけがみんなの業を請け負った。 可哀想に... 

 それにしても51.とは?ネットで検索して見る「人の最高体温は?」と。早速何件かヒットした。

・核心温が上昇した場合の限界温は42℃とされている。この温度になると、細胞の生化学反応で不可逆的な反応が起こり、死につながる。さらに、45℃になると短時間でも死の危険がある。

人間が死なずに出した最高体温は46.5度 日射病で30日間高熱を出した男性が、最高体温46.5度にまで達し、ギネス記録に認定された。 彼は高熱にもかかわらず、後遺症もなく無事に生還できた。

 ・体温計に42度までしか目盛(も)りがないのはどうして?

                 

 体温計の目盛りって、そういえば42度までだね。どうしてだか分かる?
 A・人の体温は42度より上がらないから
 B・41度になると熱は自然に下がっていくから
 C・42度以上熱が出ると人は死んでしまうから

   正解(せいかい)は「C」

 人は42度よりも高い熱が出ると死んじゃうんだ。どんなにひどい風邪(かぜ)をひいても、熱は40.9度まで。もし41度も熱が出ると、意識がなくなってしまう。さらにもっと悪くなって42度を超すと、人は間違いなく生きてはいられないのだ。だから体温計には42度以上は書いてないんだよ。

 やっぱり50以上なんて有り得ないんだ。妻にネットで調べたことを言う。送られてきた体温計の写真を初めて見せてもらう。 小さな写真で、はっきりしないがホントだ、51.6になっている。

スマホをいじっていたら画面の体温計がひっくり返った。

よく見ると、なぁーんだ!51.6じゃなくて41.5じゃないの!







前の写真、縦に送られてきたんで思わず下から上に読んだみたいだ。

わたしも寝ボケ眼でしかもメガネなしで見たんで、てっきり51.6と読んだわと言う。老親のとんだ勘違いだったんだ。それにしてもその時、俺もなんで51.6なんて信じたんだろう。考えなくてもわかるもんだと言われそうだ。いま思えばバッカみたい、しかしネットで検索するまで人間の体温の限界がどこまであるのかわからなかったなぁそれに体温計の目盛りが42までしかないのも初めて知った。


 
明けて、彼女から今朝メールあり。まだ熱が38もあるそうだ。
  41に比べれば38は楽なもんだけど今日は仕事を休むわ、私もさすが40を超えた時死ぬんじゃないかと思ったと。そうだよなぁ、41.でも危ないとこだったなぁ、あと0.5で人間の限界値に達するところだった。兄妹そして妻からラインで励ましの言葉が彼女に送られていた。コロナ禍のこのご時世、この一件で家族間の絆は深まったようだ。
 そしてその日の夕方、彼女からメールあり。「お陰様で嘘みたいに熱はストンと下がり、身体の節々の痛みもなく、あの症状は何だったんだろうかと不思議なくらいよ。皆さんにも色々と心配掛けてごめんなさい。3回目の時はもう絶対モデルナは打たないわ」と。良かった、良かった。
  明けて今日、俺の方、なんだか左側頭部がキリリと痛い。日中暗い映画館から太陽のもとに出た時のあんな片頭痛の痛みなり。妻が病院で診て貰ったら言う。この緊急事態宣言下、遊び呆けている自分に去年に続いて?の天罰が下ったか
 熱を測る。最初のアナログ体温計、なるほどよく見ると目盛りは42までしかない。5分以上挟んでいたのに測定値は34.5と出た、これ、もう水銀が凝固してしまってるよと今度は別のデジタル体温計で測ったら35,6


なんだ36にも達してない。

 

これじゃ病院に行きようがないなぁ寄る年波、連日の遊びで金属疲労を起こしてガタがきてるか、でも頭の方は全然使ってないけどなぁ、まぁ今日は走りまわらんで大人しく家に居るかなそうだ、オオタニ君をBSで応援しよう、このご時世、残る楽しみはあなたの活躍だけだ、



               怪我しないよう頑張れ!オオタニサン!
                    
    
 (後日談)
 あの騒動?から約2週間経った今夜、淳から電話あり。もうてっきりピンピンとなり元気に仕事頑張ってるかと思ったら、やはりあの高熱が祟ったのか?あれからも頭痛はするわ、肩の方も異常に腫れたりとワクチン接種の後遺症が残ってるという。 今日も病院に行って頭のCTとか撮って貰ったけど特に異常は認められないとかいずれにしろ後遺症に悩まされている。親としてはどうしようもないが一日も早い恢復を祈っている。オオタニ君は今シーズンはもう終わったのでこれから淳の方だ、


              頑張れ!! 淳!!